小ネタ・第三の足

 鼻先にポーチを当てた途端、懐かしい匂いが鼻腔一杯に広がった。
 トアル村の暖かい日差しの匂い。
 川面を渡る涼やかな風の匂い。
 そして、小さい頃からいつも一緒にいて、その成長を最近は何だか眩しい思いで見ていた女の子-イリアの匂いだ。
 「メスのにおいだろ?その面見てりゃわかるんだよ」
 その横で底意地の悪い笑みをミドナは浮かべた。
 唸るとおどけて飛び退る。
 しかしずいっと顔を近くに寄せると、
 「知らなかったけど最近の狼ってしっぽが2本あるのか?」
 …2本?
 合点がいかないリンクをよそに、ミドナはけたけた笑ってかき消えた。
 「ばーか、後脚見てみろ!」
 …後脚?
 リンクは体をひねってみた。
 そして脚の間にあるものに(毛深さ故に表面上はわからないが)顔を赤くした。
 ミドナのばか。

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