鼻先にポーチを当てた途端、懐かしい匂いが鼻腔一杯に広がった。
トアル村の暖かい日差しの匂い。
川面を渡る涼やかな風の匂い。
そして、小さい頃からいつも一緒にいて、その成長を最近は何だか眩しい思いで見ていた女の子-イリアの匂いだ。
「メスのにおいだろ?その面見てりゃわかるんだよ」
その横で底意地の悪い笑みをミドナは浮かべた。
唸るとおどけて飛び退る。
しかしずいっと顔を近くに寄せると、
「知らなかったけど最近の狼ってしっぽが2本あるのか?」
…2本?
合点がいかないリンクをよそに、ミドナはけたけた笑ってかき消えた。
「ばーか、後脚見てみろ!」
…後脚?
リンクは体をひねってみた。
そして脚の間にあるものに(毛深さ故に表面上はわからないが)顔を赤くした。
ミドナのばか。