リンクが大変な旅をしてたらしいことは知ってるわよ。
色々忘れてしまった私の為に苦労してくれた。そのことも感謝してる。
帰ってきたらハイラルのゼルダ様から何かお仕事を承ったことも名誉なことだと思うわ。
だけど何よごめんねイリア、って。ごめんね、って。
いい、私はリンクの幼馴染みよ。だからリンクが何かを隠してたってわかるの。わかるわよ。微っ妙ーに目を合わさないとかなんでもないことを喋ってるのに言葉が滑るとかね、背ばっかり伸びたってそういうところはぜーんぜん変わってないんだから。
わかるわよ。でもね私は自分のことは自分で決める。私の将来のことでリンクが関わることもあるかもしれないけどそれは私の希望とリンクの希望がかち合えばの話よ。だからリンクに謝られる筋合いなんて一切ない。っていうか謝ること自体失礼だと思わない?私はリンクの家に置いてあってリンクが使ってくれるのを待ってる家具か何かじゃないのよ。
私が何を言いたいかわかる?
大っ嫌い!
「…で?」
「イリアは子供の頃から気が強いんだ」
「だろうな」
影の宮殿の執務室、ミドナはカップを手に取るとリンクの顔をまじまじと見つめた。顔というか顔の左半分、更に言うと左の頬。
「ぱー じゃなくて ぐー だったと」
リンクは頷く。
赤黒く腫れた跡。渾身の力が籠もっていなければなかなかここまでできるものではない。この調子だとあと数日腫れは引きそうにないが。
「…でさあリンク」
「何」
「そういうことをワタシに喋るのもリンクの駄目なところだと思うぞ」
面白いからいいけど。
とは言わずミドナはカップを傾けた。