肯くんチカちゃん・その1

 「…嘘?」
 高柳は聞き返した。
 夕飯食べたばっかりだってのに帰省したときに持たされたとかいうお煎餅の袋をがさがさばりばり開けながら、宗親は頷いた。
 「そそ、会う奴のどいつもこいつも嘘みえみえのつまんない嘘しかつかねえから肯くん一流のユーモアとエスプリでついてくんないかなー、グっとくる面白い嘘」
 「ユーモアとエスプリって杉田の中で僕がそういうキャラなのがびっくりなんだけど…っていうか嘘ってつくよって宣言してつくものなのかな」
床に寝転がる宗親が差し出した煎餅を椅子をくるんと回転させて受け取ると、高柳は首を捻った。
 「…ええと、杉田とは保育園から始まって小学校も中学校も高校も同じであまつさえ寮の部屋も同じで今まで兄弟以上に仲良くやってきたけど」
 「おう」
 「実は僕、杉田のことが大嫌いで」
 瞬間、宗親の涙腺は決壊した。もうすっごい涙。滝涙。
 「勿論嘘だよ」
 目頭を押さえ鼻を鳴らす宗親に高柳はティッシュの箱を渡した。
 「ごめーんチカちゃん一瞬本気にしちゃった…いっやーハートにずっしり響いたわ流石肯くんパーフェクトだわ」
 「莫迦」

※エイプリルフールネタ※

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