普段ニュースになったりして人の注目を集めるのは派手な物事だけどそういうものが人に説明しやすい形になるまでにはニュースで扱われる時間の何千倍もかかってるって二人共もう体感で知ってるよね。検証作業もそれと同じだから。何でも作り上げたらそれでおめでとうはいお終いじゃなくてある程度までは稼働状況を見守って分析するまでが一セットだよ。
勿論その言葉に反論はありませんので三年生になってもなんだかんだ忙しく、同級生には夏休みが近づくにつれ顔の彩度が下がってく奴もちらほら出てきてる中上司の人に君たちなら大丈夫だよねーとお気楽に断言されてまだだらだらとラボに出入りしてる今日この頃。
そんなだから他の寮生とも微妙に生活リズムっぽいものがずれてて、入り口ドア脇のシューズボックスの上に何気に置かれてる箱に宗親が気がついたのは夕方以降の一通りを済ませて部屋に戻ってからだった。
「肯くーん」
宗親は歯ブラシを咥えて携帯を開いている高柳に声をかけた。箱を揺するとごさごさと嵩があるものが入ってるような音がする。
「はい?」
「この箱何よ?」
高柳は首を振った。携帯を手にしたまま親指で壁の向こうを指すジェスチャー。
「悪い、僕もまだ開けてないんだ。隣から来たんだけど僕らの部屋が最後だから後は好きにしといてねって。何か一年から順番に回ってたみたいだよ」
「ほーん」
大体こういう謎の配りものが増えるのは寮生が帰省から戻る長期休暇明けと相場は決まってるけど突発的に回ってくるものもないわけじゃない。宗親は無造作に箱の蓋を開けた。
「…あー」
呆れたようなその声に何事かと横から覗き込んだ高柳は歯ブラシを咥えたまま喉の奥でむせた。
箱の大きさの割に中身が大分少ないってのは多分素直に正直に貰った人間が多いからだろう、箱の空いた隙間はいともののあはれなりって感じだ。
高柳はちょっとごめんとバスルームに入って出てきて軽く息をついた。
「出た、毎年恒例。去年とか一昨年ってもう少しひっそりやってなかったっけ?闇から闇な感じで」
「だよな。今年は好評につき200%増量してみました?どーせこんなことすんの谷口だろ?純朴な後輩染めてどうすんだってな。戻してくるわ俺」
ドアを開けかけた宗親に高柳は声をかけた。
「別に腐るものじゃないし貰っとかなくていいの?」
宗親はきっぱり言い切った。
「ここぞって時に人からの貰いもんのありあわせで済ますって相手に失礼じゃね?というわけで俺は断固受取拒否する」
浪漫派。
箱の中から一つ高柳に投げて寄越すと宗親はドアの向こうに消えた。
いやだってもう僕持ってるし。
という言葉は打ち返してくれる相手もいなかったから、高柳は掌の上のものを見て苦笑するばかりだった。
※使うシチュエーションとか思い浮かんだり冷静だったりするあたり二人はやっぱり年上だ(イザンは実年齢はともかくあんまり同年代の世界で揉まれてないんで理屈で考えてる)というバリエーションを出してみた※