※その2※
ホッケ埠頭は海が近いせいだろう、吹きつけてくる風はバトルでかっかしている体を丁度いい按配に冷やしてくれるけどもったりと磯臭い。
自分の陣地から相手方の陣地まではほぼ一直線、けれど通路に何気に置かれている巨大なコンテナがなかなか厄介で、ゲーム開始直後なら安心して通過できるけど時間が経過すれば相手チームのメンバーがその隙間から飛び出してこないとも限らない。今この瞬間も。
わかばを構えた奴がまさしくひょいとコンテナの後ろから姿を現して、それを目にしたインク補給中のイカ子は人姿にチェンジするなり逃げ出した。
「こら!」
コンテナの上から3Kスコープでそいつを一発で仕留めた先輩はコンテナから下りるなりイカ子をとっ捕まえてその尻をすぱーんと引っ叩いた。イカ子がぴょんと跳ねる。
「ひゃ!?な、何するんですかせんぱい」
「あーのーな、逃げるときに敵に背中向ける馬鹿がいるか。敵の方見ながら後退しろ」
途端にイカ子の顔は赤くなった。もじもじしながら内股をすり合わせて先輩をじっと見る。
「あ、あのせんぱい」
「ん?」
「私お尻叩かれるのも好きです」
※その3※
昨日も負けて今日も負け、負けが込んでるので先輩は夕暮れ時の帰り道、ふと思いついたことを言ってみましたとさ。
「あのさ、お前なんかいつも持ってるウエポン違うみたいだけどどんだけ持ってんだ?見せてみ」
「あ、はいです」
イカ子はナワバト時にステージまでいつも背負って持ってってるナップザックを開けると逆さにした。じゃらじゃらじゃらーっと出てくる一つ二つ三つ四つ五つ。
先輩は呆れ顔でその中の一つを手にした。びかびか光るごつい銃身に銃口、ずっしりとした重み。
「…こら、.52ガロンって何だよこれ」
にひゃっとイカ子は笑った。
「え、ほらやっぱりキルが確実にできる強力なウエポンっていいじゃないですか」
「あーのーな、お前はエイムもロクにできない下手っかすなんだからキルなんて考えないでいい。連射できてインク持ちもいいこの辺にしとけって」
先輩はわかばシューターを取り上げてイカ子に放った。受け取ると、イカ子は顔を赤くして先輩の顔をじっと見つめた。グリップをもじもじすりすりっとする。
「あ、あのせんぱい」
「ん?」
「せんぱいって何連射できますか」