ぼつねた

 最後の瞬間に向けて腰の動きを大きくする。それに合わせて相手の動きも誘うように蠱惑的になって、繋がる部分は熱い。
 薄暗い中自分の下で仰向けになった相手の胸や腹にうっすら浮かぶ汗と夢中で貪る顔に、満足にはまだもう少し足らないかと気を逸らすために視線を向こうにやると自分達が身を潜める木陰から大分離れた辺り、村と外とを結ぶ道の辺に人影が目についた。
 あの娘だ。使いでもあったのか腕に籠を抱えて、方向からすると娘の家に戻るところだろうか。
 見ていたのは数瞬だったような気がするけれど、顎を指でぱちんと弾かれて我に返った。
 「こら、気を抜かない」
 自分の体の下の相手は口を尖らせた。
 「わ、ごめん」
 お陰で最後はちょっと間抜けてしまったが出すものを出してしまうと相手は軽い謝罪を受け入れた。
 「…なんだ、まだあの娘のこと気にしてたの?」
 けだるく服を体に巻きつけながら、相手は言った。
 「あの娘は駄目だと思うけどね。こっちに来て何年も経つのにぜーんぜん馴染むつもりなんてないみたい。お堅いのよ」
 「知らなかったよそんなの」
 本当の子供の頃とは違って大きくなるうちいつの間にか男と女で住む世界が分断されてしまい、たとえ同じ村に済んでいても女衆同士のやりとりには疎くなってしまったのだけどあの娘が今そういう立ち位置だなんてまるで知らなかった。用事がある折に彼女の家を訪ねることは何度かあったが彼女の口の利き方や物腰は確かにこの村の女とは一風変わっていた。よく言う『お上品なお町の子』って奴。しかしそれは自分にとっては決して不快な要素ではなかった。
 「いつか都に戻るんでしょ?変にこっちに馴染むと戻ってから困るとかじゃない?あっちとこっちで色々違うこともあるだろうし」
 「…そうか」
 頷きながらも身支度を整えると立ち上がり、しかしその足は今しがた娘が去っていった方向に向かっていた。
 「もう、知らないから」

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