こういうのも恋っぽいだろ

 何の変哲もない週末の朝、三人揃って終えた朝食の席で湯呑みを手にくつろいでいると不意に恋人がポケットを探るなり何やら小さな包みを目の前に置いた。小さい花がプリントされてる紙に包んであって、ピンク色のリボンがかけてあるやつ。
 「ほれ」
 と、ぶっきらぼうに恋人は言った。
 「ほれとは何だ、己の体なら散々掘ってるだろうがこの助平。それとも何か、掘られたいってか?生憎己には棒状の生殖器などついとらん」
 「No!」
 恋人の保護者の頭ががくんと後ろにのけぞった。保護者の湯呑の中身が大波を立てる。
 割れんばかりの勢いでテーブルを叩く恋人。
 「ちげーよ!湧いた発言で週末の朝っぱらから平穏乱すな!プレゼントだプレゼント!竜ってのは何かヒカリモノが好きなんだろ、本で読んだぞ?!」
 「人の妄想と嫉妬と無知が産んだくだらん伝承だな。人が富とあがめるモノに己は興味なぞない。でもプレゼントって言うなら開けてやろう」
 何か言いたそうな恋人をほったらかしにして包みを開封すると入ってるのは装身具。見たことはある、町ゆく人が両の耳につけてるやつ。色がそういえば己の瞳と同じ色だ。
 「色がお前の目と同じだし似合うかと思って」
 恋人はあっぱれに強力で場の空気を変えた。

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