スカウォ・その3

早く早く早く。

リンクは焦っていた。
丸腰かと侮ったのは大間違い、先程から相対している銀髪の男は疲れ知らずだった。構えて突っ込んでゆけばその姿はばらばらと分解し、大きく振りかぶって斬り下ろそうとすれば剣先を素手で捕らえられる。
目の前の男はまるで余裕で、その口元には馬鹿にしたような笑みさえ浮かんでいる。翻ってこちらはこれだという反撃の方法が思い浮かばずに遮二無二剣を振るうだけ。このまま続けていればこちらの集中か体力か、どちらかが尽きてしまうのも時間の問題だ。集中が尽きれば男の飛ばす小さな矢を見切ることはできなくなり、体力が尽きれば剣を振る腕が重く鈍くなるだろう。
では。
腹は一瞬で決まった。
男の左側に回り込もうと足を踏み込み―男がこちらをいなそうと上半身を捻ったのをはかってジャンプする。
ぎん、と、嫌な感じの金属音がして、次の瞬間には思い切り壁面に叩きつけられていた。目の前がちょっと暗くなったかと思うとまた全ての感覚が体に戻ってくる。頭と背中の激痛。脚がどうにも立たない。そして己の右手の中は空だ。
「…フェイントのつもりだったのかい?甘いね、実に甘い」
ひたひたとこちらに近寄ってきた男はついさっきまで己が構えていた剣を手にしている。
「ワタシも伊達に百戦錬磨の経験は積んでないからね、この経験の前ではキミの作戦なぞ猿知恵だ」
そして、その切っ先が己の喉元に向く。男の腕がもったいぶってるんじゃないかというほどゆっくりと伸びて―
瞬間、剣が青い光を帯び意志を持つもののように男の目を射た。
何が起こったのかは剣の主であるリンクにははっきりとわかった。
「おお!?」
男が怯んで剣を取り落とす。
「マスター、立ってください!」
剣から浮かぶ精霊は叫んだ。そんな無理なことをと思いはしたが脚はこちらに従うことに決めたようだ、何とか立ち上がることはできた。
そのまま駆け出そうとして、しかしすぐさま立ち直った男が腕を素早くしならせた先は
「…何かと思えば精霊か」
男の手はしっかとファイの首に食い込んでいた。逃げようともがくでなくファイの体はだらりとしたままだ。
「…ファイ!」
たとえ今まであの精霊と何となく気持が通わないような気はしていてもそんなものを見て黙ってもいられる筈がない。
「おっと。ワタシが何を掴んでいるのかはわかるねリンク君?」
動くなよ、と、こちらを牽制すると男はファイを自分の方に向き直らせた。
「満足に人型も維持できない下等な精霊が面白い邪魔の仕方をしてくれるじゃないか」

※某所某板の某スレにヒント貰い。人の体はこれはこれで楽しみもあるんだよとかこのままキミはそこで見ていたまえとかお約束パターン。ファイが人型に変化したりとか。書き進めば18禁的だけど寸止め

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