「…だから、どうして僕がここに居る」
「んなこと言ったって俺らはお前のヤサも仲間の連絡先も知らねえしお前みたいなのを女共のところに突っ込んだら人体実験と貞操の危機だし所帯持ち彼女持ちのところに連れてって変な空気にさせるわけにいかんだろ?」
「僕が聞きたいのはそっちじゃない」
多少声を荒げたのが効いたのか冷蔵庫を開けて覗き込んでいた青年はカウチの少年の方を見て軽く肩を竦めた。
「お前昨日テムのダイナーのところに晩飯食いに来たよな?で俺らと居合わせて」
「それは覚えてる」
「お前パスタにフォーク突っ込んだまま寝てたんだぜ?アホか」
…
忙しかったのだ。
全てが焼け尽くされた後、同胞達を取り纏める役割を担ったのはリオだった。
バーニッシュは力を失い何ら普通の人間と変わらない体になったとはいえ残る差別と日々の生活と戦わなくてはいかずどうしても団結は必要で、その役に彼以上の存在はなかったから。
同胞の為日々身を砕き私生活をおざなりにした原因と結果によりこんな事態―人事不省の上以前世話になった消防隊員の部屋で目が覚めた―と悟って少年は苦虫をコップ一杯噛み下したような顔をした。