ククゼシ好きさん12のお題・ダイス
ダイスを掌の中で転がして、テーブルに伏せる。
出た目は6。先程から何度やっても出るのは6ばかりだ。
「イカサマダイス?」
「そう。ダイスの比重が偏ってて6が出易くなってる。ここぞという時に使うんだけど怪しまれないように別の目出すのもテクニックなんだぜ」
言うと、ククールはダイスを伏せた。手をのけると出たのは3。
「ククールって本当、いかがわしいことにばっかり詳しいわよね」
ゼシカはダイスを取るとひねくりまわした。何の変哲もない、普通のダイスのように思える。比重が偏っているとは言ってもどこがどうなっているのかぴんとこない。
ククールに倣ってダイスを転がして、伏せる。
その手の上にククールの手が重なった。
「…何よ?」
ゼシカは心外だという顔をしてククールを見た。
「さて目は丁か半かどっちだ?」
「だって6が出易くなってるんでしょ?丁じゃないの?」
「じゃあ俺は半に掛けてみようか?ゼシカが負けたらキス一回な」
抗議を無視してククールは手を退けた。
目は1。
「…」
「『出易い』だけで『絶対』じゃねえんだよ。ほらゼシカの負け」
何が起こったかゼシカが悟ったときはもう遅い。
ククールはゼシカの腰をがっちりホールドした。
近づいてくる青い瞳。
銀色の睫毛の本数が数えられるほど至近距離。
思わずゼシカはぎゅうと目を閉じた。
ククールの息遣いが聞こえて、
聞こえて、
聞こえて、
聞こえて、て。
「え?」
あまりの空白に目を見開くとククールが声を殺して笑っている。
「…もしかして本気にした?あー面白え」
「…」
「安心しろよ俺がゼシカの可愛い唇奪っちゃうのはもっとムード満点ロマンチックな場所でにするから」
ゼシカの中で何かが音をたてて切れた。
いつも通りのかなり一方的な喧嘩を肴にエールをあおりながら、ヤンガスはぽつっと呟いた。
「毎度のことながらククールも人が悪いでがすね」
「ねー」
床に転がるダイスを見てヤンガスは首を振った。
「ありゃ普通のダイスでがすよ。ククールは出目を自分で操ってたんでがす」