2023.01.23 17:39
男3号・没ネタその2
涙で顔が凄いことになってるスイの手を引き引き部屋まで戻った。夕暮れ時の街中はそこそこの人出でこっちは明らかに場違いで、なんだ痴話喧嘩かと、お説教をかましてやろうかとこっちの顔を覗いてくる奴もいたけど一睨みで退散していった。余計なお世話だ。
「私強くなっちゃったじゃないですか。もうせんぱいのところに置いてもらえないのかなって。なんとか一人でやってけるまでって一番最初にここに来た時の約束だったから、だから」
渡したハンドタオルはもう半分方しっとりしてて、しゃくりあげながらスイはやっとそれだけ言った。
「それで何も言わずに出てく奴がいるかよ」
なんか頭痛い。言われてもないこと勝手に先取りして動く行動力は大したもんだけどこういう斜め上に発揮されるとは思わなかった。
「だっていままでお世話になりましたって言ったら寂しいですもん」
べそべそべそ。
ああいけない。こいつかわいい。生活能力に怪しいとこがあってでも地味に努力はするしその努力を隠すし何年も居座ってるからちょっとは図々しいのかと思ってたらきっちり考えてて実行したと思ったらあっさりバレてしかも計算ずくじゃなかったぽくて泣いてるこいつかわいい。
「あのな、俺もこっち出てきて男も女も色んな奴と暮らしたけどさ、皆大体そんなに長居はしなかったよ。いつの間にか次のアテ見つけて出てくんだ。だからお前もそういう奴かと思ってたんだけどな」
「…はぁい」
べそべそべそ。
握り締めてるだけで役に立ってないハンドタオルを取り上げてスイの顏を軽く拭った。急に面倒になってタオルを後ろに放り投げると腕を伸ばしてよっこらせとスイの体を抱き寄せた。そのまま床に倒れこむ。
「…せんぱい、何か誤魔化そうとしてるでしょ」
スイは口を尖らせた。
「そうだよ。でも黙ってて気まずいよりいいだろ」
いつの間にかが何年かになってたのはスイが初めてだったんだけど。
「…私、まだせんぱいのところに居たら駄目ですか」
自分の体の下でスイがほそぼそと喘ぐ。
「そんなのお前が飽きるまで居て構わないんだぜ」
「飽きたりしませんよ」
スイの腕が首に絡んできた。
ああいけない、やっぱりこいつかわいいわ。
※※※
イカ子(仮称)にやっと名前がついたー
3号は男も女もシラセで統一
イカ子のいいとこどんなとこ、と煎じ詰めて努力の人というステータスを振る
なんでも続けてればそこそこは上手になる理論
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