2019.10.25 17:44
すまーんカップル表記の法則わかんね
ルチアはスマホに目を落としながら言った。
「うちらも面倒なこと押しつけられたね」
と。
「…面倒なことって?」
シフト勤務でこれから寝る組と起きてて待機組に分かれるほんの30分前のことだ。
待機スペースのソファでルチアが見ていたのは勤務者に配られる隊員連絡用のスマホだった。
彼女の言葉に仮眠室に持ち込む為に持っていたマグをテーブルに置いて自分のスマホを開くとトップラインに出ていたのは
マッドバーニッシュ仮釈放決定 公的機関での勤務課す
という言葉だった。
トップラインに続く文章を目で追う。仮釈放。条件付き。公的機関での監視と時限付きの勤務。勤務先は一般市民とは直接関わることの比較的少ない機関に限定され現在検討されている部署としては…
「…あー…」
その あー には含む気持ちはそれはそれは沢山あったけど、まあありそうな話だとは思えた。
「その通り、ここでも何人か引き受けることになった」
その声に顔を上げると背後に立っていたのはイグニスだった。
「隊長」
「見ればわかるとは思うが管理上の必要から強面の人間が揃っている場所ばかりだ。しかもこちらで引き受けるのは札付きでな」
「札付き?」
「マッドバーニッシュの元幹部三人組と他三名」
彼の声音は平坦でしかもサングラスをかけているしこの決定をどう解釈しているのかは測りがたかったけれど。
「え…それって大丈夫なんですか」
口を開きかけた隊長に先んじたのはルチアだった。
「すげー微妙な立場の人はなるべく変な色のつかない場所に置いときたいって判断でしょ。警察とか軍と違ってうちはお上の意向の影響が比較的少ない部署だから事故に見せかけてうっかり背後から撃ち殺される危険も政治家せんせーの右や左の活動の看板に勧誘される可能性も少ないってことだよね。まあ勤務中の本当の事故で死んじゃったらそれはそれってことで」
「その通りだ」
隊長は低く鼻を鳴らした。
あの日まで、ただの市民にとってはプロメポリスの元司政官は凄い人って印象しかなかったけど内部では結構強引にことを進めていたりもしたらしく、そんな話はずっとずっと新聞やテレビや各種のメディアで暴露され続けていた。
ただその一方でマッドバーニッシュについての報道は少なかった。首領がまだ未成年ということでそこら辺は律義に法律で保護され、実名も顔写真もメディアには晒されることはなく、マッドバーニッシュの長年の犯罪の割に扱いが軽いのはおかしいなと思っていたら彼らを使った人体実験は当局にとってはかなりの汚点でデリケートな話で情報公開の度合いを検討中ということらしかった。
だから幹部三人と聞いた時にふっと思い浮かべたのはガロと肩を並べていた男の子の曖昧な印象だった。だってその時点であの日からもう何か月も経っていたから。
※※
リオアイ?アイリオ?
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